東京高等裁判所 平成11年(う)2012号 判決
所論は、原判示第二の覚せい剤所持の事実について、所持にかかる覚せい剤二袋中、一袋については自首が成立し、当然裁量により自首減軽すべきであるのに、これをしなかった原判決には、法令適用の誤がある、というのである。
そこで、検討するに、関係証拠によれば、(一)平成一一年七月二七日、原判示第二記載の麻雀店において、被告人が、覚せい剤の入ったパケ一袋を所携のセカンドバッグ内に入れ(以下「覚せい剤甲」という。)、同様のパケ一袋を千円札に包み、その上を更にティッシュペーパーで包んだ状態で左胸ポケットに入れて(以下「覚せい剤乙」という。)、共に所持していたこと、(二)被告人は、右両覚せい剤を所持したまま、同店内で暴行事件を起こし、臨場した警察官に現行犯逮捕されたが、その際、覚せい剤甲の入ったセカンドバッグは同店内に遺留し、覚せい剤乙は千円札等に包んだまま、すきをみて同店内に投棄したこと、(三)右逮捕後、右セカンドバッグは領置され、中から覚せい剤甲が発見されたことから、被告人の同覚せい剤に対する所持事実が発覚し、(四)覚せい剤乙については、同店内でこれを拾った者を経て、被告人の知り合いである長谷川洋祐が入手したところ、これを聞き及んだ被告人が、右覚せい剤は、被告人が所持していた覚せい剤乙である旨取調担当警察官に申述したことから、同覚せい剤に対する被告人の所持事実が捜査機関に判明したこと、以上の事実が明らかである。
そうすると、なるほど、被告人が覚せい剤乙を所持していたことは、被告人が捜査官に自ら申し出たことによって明らかになったものではあるが、前記(一)のとおり、被告人は、本件麻雀店において、覚せい剤甲、乙を共に身辺に所持していたもので、右覚せい剤甲と乙については一個の所持があったと評価され、単純一罪を構成するから、被告人がその一部である覚せい剤乙について自ら犯罪を申告したからといって、自首が成立することにはならない。したがって、所論はその前提を欠く。
(高木俊夫 岡村稔 芦澤政治)